ストーリー
サーシェ

章ごとあらすじ(ていねい)6~10章

2025/02/09 14:43

2025/03/20 11:33


第六章 親の願い
 敵国トレンティアで捜索任務を続けていたヨンは、しかしロードからもたらされた情報を受けて急遽帰国の選択をすることになる。
 トレンティアの本軍が目指すのはズミの中西部に位置する王都、ラズミル。その行軍経路上にある故郷の村と、そこに住む養父の安否を確かめるために。
 トレンティアの王都に残って調査を続けるパウルと一旦の別れを告げ、ヨンは自らの呪われた過去に近付いていく。

 多くの殺戮と憎悪の中をくぐり抜けて生きた少年を、その父はどう眼差すのか。その願いを、子はどう受け取っていくのか。
 親と子の痛切な想いと葛藤の中で、それでも彼らは祖国のための戦いの一歩を、力強く踏み出していく。

 そしてその攻防の果てに奇しくも明かされたのは、パウル・イグノールという男の過去と決意だった。


第七章 かけがえのないもの
 トレンティア最強と謳われる魔剣士クラウスとの激しい戦いを乗り越え、レジスタンス部隊はトレンティア本軍相手に勝利を収めた。
 しかしそのさなかで、敵軍に正体を知られ、命を狙われる危険を予見したパウルは、仲間を巻き込まないためにと一人旅立つことを決意する。

 それを放っておけずに追うことにしたヨンと、パウルの二人旅がまた始まっていく。
 そしてその先で繰り広げられたのは、またも魔道人形をめぐる惨劇の数々だった。

 かけがえのない仲間、かけがえのない恋人、かけがえのない家族……全ての者の眼差しが交差する悲劇の渦中で、ついにヨンの出自に隠されていた運命が明かされる。


第八章 帰るべき場所
 ずっと明かされないままでいた己の出自、そしてパウルの正体。
 それを知ってしまったヨンはわだかまりを抱えたままで、しかし彼らを取り巻く戦況は否応もなく動き出す。

 かつてズミの王都と呼ばれた地、ラズミル。その争奪をかけてズミの戦士達はついに一丸となり、トレンティアとの戦いに挑む。
 やがて“ズミ軍”となる軍団を率いる将軍モルズの元に、今はヨンもパウルも、そしてジュリやアルド達も加わり、戦いは佳境へと向かっていく。

 その先で彼らを待ち受けていたものは、戦慄の戦場、苦悶に満ちた過去との再会と、そして別れ。
 数々の葛藤に晒されながら、それでも彼らは歩みを進めていく。それぞれが、それぞれの帰るべき場所を見つめて。


第九章 戦場の女達
 王都ラズミルの地へと入ったズミ軍は、そこに旗を揚げ、やがて国家の体を形作っていくことになる。
 一方、死んだと思われていた王族と近衛騎士の反逆、その報を受けてトレンティアは混乱に陥り、両国の間の戦況はにわかに膠着の相を現す。
 戦争は、終わったわけではない。廃墟の上に吹く風にその戦慄の予感をまだにおわせたままで、その中でも人々は、それぞれの未来を求めて歩き出す。

 揺れ動く状況の中で、トレンティア王族としての立場を確立していくイグノール。
 父から授けられた“魔剣”を手に、“ズミの英雄”という肩書きを背負って歩み続けるヨン。
 政治の激動の中を外交官として、あるいはレジスタンスの同盟者として、暗躍する貴族ロード。
 二分された国の溝を挟んで対立する、フォス・カディアルの兄弟。
 ただ戦いの行く末を見つめ続ける男達の傍ら、戦場に立つ女達は何を眼差すのか。

 王女にして、騎士達の母であるエレアノール。
 戦争の痛みに打ちひしがれてその癒やしに従事する、ヨンの恋人ジュリ。
 かつてズミの命運と悲劇を抱いて没した王女ミョーネと、その姉妹分であるリョドル。
 両国の政治と男の欲望の間を奔走する、娼婦ティファ。
 彼女達が望んで選ぶのは、平穏と安寧に満ちた幸福か、それとも。


第十章 わかたれる道
 ラズミルに布陣するズミ軍。それと同盟協定を組むイグノール軍。
 混乱を孕みながらもズミへ、継戦の姿勢を変えないトレンティア軍。その上層部に食い入りながらもズミのレジスタンスとの繋がりを持つクラネルト家。
 それぞれ思惑を異にしながら、ひとつの戦争に臨む各勢力の間で、やがて凄惨な戦いの火蓋が切って落とされる。

 親と子に、兄と弟に、同胞であるはずの者達の間に、かつては志をひとつにしたはずの仲間達の間に、その分断は滲むように広がっていく。
 分かたれる戦場、分かたれる絆。その中で彼らはそれぞれの信念のために、痛みを噛み殺して、自らの道を選ばなければならなかった。
 いつか、分かたれた私達の手が結び合う、その未来を信じて。