ストーリー
サーシェ

トレンティアの文化

2024/12/04 14:25

2024/12/04 18:18


◆風俗
 ズミが「なんとなく中央~東アジア」とかいう曖昧で広大なモデルであるのに対して、かなりはっきりとヨーロッパモデルです。
 魔法という技術が発達していて、経済的にも精神的にも成熟しており、ズミと比べると現代の私達の文化感覚に近いです(近いだけで同じではないですが)。
 国王とそれが従える職業軍人によって強固に統治され、その恩恵にあずかって生きる市民は比較的平穏な暮らしをしており、ズミ人のように市民一人ひとりが武器を取って戦う気概はありません。ズミ人には「腰抜け民族」と言われます。
 森を切り開いて田畑を作り、どんどんと人口を増やしているのでズミと比べて山林が薄く、農業地帯が広大です。
 また、乗馬文化が非常に盛んです。ズミ人の弓と同じぐらい、トレンティア人の男にとっての基礎教養とされています。しかし、女性が馬に乗ることはどこの地域でもほとんどありません。

 また、王都の中心には「トレント」と呼ばれる巨大な樹木があります。ハッキリ大きさ決めてないけどスカイツリーぐらいでかいです。モチーフは世界樹です。
 トレントは膨大な魔力を循環させる樹木であり、その根を伝ってトレンティアの国土に豊かな魔力資源をもたらしています。その土台あってこそ、トレンティアでは魔法技術が発達しています。

◆宗教と魔法
 ひとりの「神」が世界を創造したという創造神話が語られる一神教です。
 トレンティアの神話では、トレントは創造神の「依り代」であり、それを伝って人々にもたらされた魔法技術は「神が人に与えた聖なる力」と理解されています。

 また、魔法を使えるのは人間だけで、鳥や獣は使わないことから人間のことを「魔法を使える者」という意味で「魔族」と呼称することがあります。
 祈りの言葉の中で魔族という言葉がちょいちょい出てきますが、ファンタジーものによくある魔物とか悪魔とか、そういう悪い感じのモンスターなどを示す文脈とは全く異なります。非常に神聖で肯定的な文脈で「人間」を指し示す用語です。
 魔法は神からの授かりものなので、魔法全体が宗教的で神聖なものと見なされ、闇魔法とかも存在しません。

 神は一神とされますが、神の守護者や天使的な存在が聖典の中には説かれており、そのような特別な存在を「神位(しんい)」と言います。厳密にいえばトレントもこの神位に相当する存在です。
 神位は複数いますが、それぞれの神位を祀ることを使命とする一族がそれぞれいて、その家系が貴族の中でも特別な権威を持っていたりします。

 神位にはそれぞれ固定の形容詞が定められており、それと共に名前を口にすることが祈りの定型句になります。作中で登場するものでは「神聖なるトレント」、「勇猛なるフォス」、「慈愛深きレイン」、「血潮猛きフラル」などがあります。
 しかし人々が日常的に祈るのはほとんどどんな場合でも「神聖なるトレント」のみです。
 創造主たる唯一神そのものはおいそれと呼ぶことすら憚られる畏怖の対象であり、神に直接祈ることは稀です。その場合は自分の命や人生の全てを懸けるぐらいの、重大な決意の表明となります。

 政教一致している社会であり、また魔法というものが土台宗教的な背景を持っている文化ですので、権力者としての地位と魔法学者と聖職者の地位は連動する傾向にあります。
 国王=最高位の聖職者です。魔法は技術的なものなので偉い人だからといって魔法が上手いわけではないですが、理想としてはそうなってます。

 ただ作中での近年は、魔法文化を宗教的文脈から切り離して「科学」として研究する動きが大きくなってきており、保守的な「宗教的魔法学者」と近代的な「科学的魔法学者」との間で立場の対立があったりします。

 特に大規模な魔術によって隣国ズミを侵略したことに対して、保守的な学者からは「神様から授かった力を戦争に使うなど許されない」と人道的な反発を強く受けていたりしてます。