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イラスト説明
真っ白な雪の世界に乾いた銃声が響く。その後、どさりと物が倒れる音と、それに近付く足音。
その足音があまりに中途半端な場所から始まっているのは、彼の背に大きな翼が生えているのを見れば説明がつくだろう。
足元で白雪に赤色を広げるモノを覗き込み、まだ熱い銃身で軽くつついて様子を伺う。
獲物が動かなくなったのを確認して一息つくと、それに合わせて先程まで周囲を漂い辺りの視界を妨げていた雪の欠片達が霧散していった。
獲物をひょいと抱え、翼を大きく広げて飛び立ち、その日獲った他の獲物の隠し場所に向かう。そう遠くない距離を進んだ先にあるそこは一見何の変哲もない雪山の一角。他と違う所があるとしたら、一箇所だけ雪が地形と関係なしに高く盛り上がっている事だった。
その雪の塊の前に降り立ち手をひらりと動かすと山のようになっていた雪が四方に散っていき、その中に隠されていたものが姿を現す。
立派な角の鹿に、肉付きのいい兎、小さな栗鼠、それに猪と、熊なども。
それらに先程の獲物を加え、ずらりと並んだ今日の成果を眺めて少し誇らしげにした。
「今日もいっぱいとれたねぇ!ね、ハース。今回のはどうだった?」
後ろに振り向き何もない空間を見上げて話しかけると、頭のあるはずの位置で代わりに炎が燃え盛っている黒づくめの人型が姿を現し応える。
「ふむ、合計で16日と9時間38分といったところか。頭数の割には…だな。」
「えぇ〜それだけ?…まぁでも美味しそうだからいいかぁ。えーと、これとこれとかかな。はい、帰ったらこれで今日のご飯作ってー!美味しいやつ!」
「了解した。腕によりをかけよう。」
獲物の中から見繕ったいくつかを渡し、美味しいご飯を思い浮かべて上機嫌になりながら帰路につこうとした矢先、
「そこのあなた。」
後ろから声がした。
驚いて振り向くとこの辺りでは見ない容貌の女の人が立っていた。白色に青と緑の差し色が特徴的な格好をした、ここでは滅多に見ない獣人でもエルフでもない人。さっきまで誰もいなかったのに、どうしてだろう。
「えと…ぼ、僕…?」
ここ数百年でハース以外に話しかけられた事なんてほぼなくて、本当に僕に言ったのかと周りを見回した後たじろいだ返事をしてしまう。
「えぇそうよ。貴方に用があって来たの。」
こちらの疑問や動揺なんてまるで無いように彼女は続ける。そして何やら形式ばった文章が沢山書かれている紙をこちらに差し出して言った。
「ウインスター・ホワイト、貴方が必要なのです。国のため力を貸してくださいな。」
「……!」
思わず息を呑んだ。
「僕が、必要…!?」
それはなんて甘美な言葉だろう。僕が必要とされているなんて!そんなことを言われたのは初めてだった。
嬉しさのあまり、どうして国がとかなぜ自分のことを知っているのかなんて事が頭を過ぎることもなく目を輝かせて元気よく肯定の返事をした。
その足音があまりに中途半端な場所から始まっているのは、彼の背に大きな翼が生えているのを見れば説明がつくだろう。
足元で白雪に赤色を広げるモノを覗き込み、まだ熱い銃身で軽くつついて様子を伺う。
獲物が動かなくなったのを確認して一息つくと、それに合わせて先程まで周囲を漂い辺りの視界を妨げていた雪の欠片達が霧散していった。
獲物をひょいと抱え、翼を大きく広げて飛び立ち、その日獲った他の獲物の隠し場所に向かう。そう遠くない距離を進んだ先にあるそこは一見何の変哲もない雪山の一角。他と違う所があるとしたら、一箇所だけ雪が地形と関係なしに高く盛り上がっている事だった。
その雪の塊の前に降り立ち手をひらりと動かすと山のようになっていた雪が四方に散っていき、その中に隠されていたものが姿を現す。
立派な角の鹿に、肉付きのいい兎、小さな栗鼠、それに猪と、熊なども。
それらに先程の獲物を加え、ずらりと並んだ今日の成果を眺めて少し誇らしげにした。
「今日もいっぱいとれたねぇ!ね、ハース。今回のはどうだった?」
後ろに振り向き何もない空間を見上げて話しかけると、頭のあるはずの位置で代わりに炎が燃え盛っている黒づくめの人型が姿を現し応える。
「ふむ、合計で16日と9時間38分といったところか。頭数の割には…だな。」
「えぇ〜それだけ?…まぁでも美味しそうだからいいかぁ。えーと、これとこれとかかな。はい、帰ったらこれで今日のご飯作ってー!美味しいやつ!」
「了解した。腕によりをかけよう。」
獲物の中から見繕ったいくつかを渡し、美味しいご飯を思い浮かべて上機嫌になりながら帰路につこうとした矢先、
「そこのあなた。」
後ろから声がした。
驚いて振り向くとこの辺りでは見ない容貌の女の人が立っていた。白色に青と緑の差し色が特徴的な格好をした、ここでは滅多に見ない獣人でもエルフでもない人。さっきまで誰もいなかったのに、どうしてだろう。
「えと…ぼ、僕…?」
ここ数百年でハース以外に話しかけられた事なんてほぼなくて、本当に僕に言ったのかと周りを見回した後たじろいだ返事をしてしまう。
「えぇそうよ。貴方に用があって来たの。」
こちらの疑問や動揺なんてまるで無いように彼女は続ける。そして何やら形式ばった文章が沢山書かれている紙をこちらに差し出して言った。
「ウインスター・ホワイト、貴方が必要なのです。国のため力を貸してくださいな。」
「……!」
思わず息を呑んだ。
「僕が、必要…!?」
それはなんて甘美な言葉だろう。僕が必要とされているなんて!そんなことを言われたのは初めてだった。
嬉しさのあまり、どうして国がとかなぜ自分のことを知っているのかなんて事が頭を過ぎることもなく目を輝かせて元気よく肯定の返事をした。
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