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「きょろきょろってのはおかしいんじゃない? 太陽だけを追いかけているのだから……、これはよそ見なんてしない、一途な女の花よ。ええ、わたしによく似合うわね」
そう皮肉った返事をしてやる。パウルも釣られるように笑い飛ばした。
「口の減らない女だな。それじゃあ私には振り向いてもくれなさそうだな? ラファエル・ロードの向日葵さん」
私は薄く笑いを作ったままその顔を見上げる。
彼に“乗り換え”を考えてもいい、なんて冗談を言ったのは先日のことだが、こんな口説き文句を言ってくるということは意外と乗り気なのだろうか。まったく、貴族の男というのは油断も隙もない。
しかしどうやら清らかな神官(*)はその手合いの策略を好まないらしい。後ろから私達を見下ろし、不機嫌な表情を浮かべたのが見えた。
「その花は私が活けてたのに。人が買った花で女を口説くんじゃない」
パウルは途端に作った笑みを引っ込めて、呆れた顔を浮かべて立ち上がった。
「ケチなこと言うなって。花瓶の中の花もまたいいが、やっぱり乙女のこうべにこそ相応しいというものだ。ほらお前も髪に飾ってみろよ。お前にはそうだな……、奥ゆかしい夕暮れ色の桔梗の花……」
「誰が乙女だよ」
女性経験のない彼をからかって言ってるのだろうか、男同士で花をやりとりして戯れている様は……、ああ、やっぱりやけに平和だ。
ふと視線を逸らすと、壁際に置物みたいに突っ立っているヨンの姿もあった。
相変わらず気配が静かすぎて気付くのにすら時間がかかる。さすがにパウル達の戯れに呆れた顔で首を傾げているようだ。
もし、本当に私がロードから離れてイグノールのもとへ降ったのなら……、この景色の中に私も入るようになるんだろうか、なんて夢想をしてみる。……ああ、馬鹿げた夢だ。
「……ねえイグノール殿下。それじゃああなたには、一途な向日葵のために……恋のキューピッドになってもらえるかしら?」
そう悪戯に笑ってやった。パウルは本当にリョドルの髪に桔梗の花を挿して遊んでいたが、何気もない顔で振り向いてきた。
〟
(113話「大輪のエクスタシー」より引用)
※「清らかな神官」=「リョドル」がリョーのことです。
どう見てもリョーが主役のシーンではないんだけどお花挿してるリョーを描きたかった。
最終更新日時: 2025/02/24 18:27
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