ドキュメント
ときわのひよく(+つがいのちょう)
「中央の研究施設で反乱があったらしいが」
「実験体が逃げ出した」
「精霊化実験の失敗作が?」
「今は死神と名乗っているようだ」
「時計塔の【マキナ】はどうなった?」
「……その情報は高くなるが構わないか?」
「その情報、本当は無いのだろう?」
「…………」
「月影の兎はどこへ行った」
「我等が主は……」
天使家の地上界の話。
昔昔、天使や精霊がよく姿を見せた時代、人間達は翼を持つ天使達を羨み、美しい精霊に憧れた。
とある1人の人間が、その欲深い心で天使や精霊を捕え人間をそれらの存在へと近付ける実験を始めた。
人間の住まう世界の中央に、天界と最も近い大陸がある。
誰も手を付けなかった神聖な土地。
彼はそこを拠点とし、人工精霊を創ると言い仲間を集めた。
時は流れ、人間の住む世界から天使や精霊は姿を消していった。
研究施設を作った人間は死に、施設と精霊を作るという目的のみが残った。
唯一の成功作は中央の時計塔で眠っている。
それ以外は全て失敗作だ。
片翼は成功と認められない。
翼は対でなければ意味が無い。
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「……にーちゃんを探さないと……。ねーちゃんは泣いてるし、みんなのお給料とか生活費とか大変なんよ」
東の領地で、情報屋の一族の少女が呟いた。