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コラボコメント
アザルの誕生日記念に本編小説の挿絵っぽいシリーズ。
1月のハルク誕生日は祝えなかったのでもののついでにいっしょくたに。
〝
「アザル、お前もいつかベルタスに来いよ。ズミとは全然違うからきっと驚くぞ。俺が案内してやる」
アザルは少しだけ驚いた顔になって視線を上げた。
「それ、トレンティアの町? 陛下が行くなら俺も行くけど……いや、でも今日でクビになるかもしれないから無理かも……」
答える言葉はやっぱり悲愴だった。ロイは少し不機嫌そうにして首を振る。
「別に王様の従者じゃなくても来れるかもしれないじゃないか。すぐは無理でも、大人になったら来れるだろ。いつかな、いつか」
「うん……」
それはきっと戦争が終わった後のことなのだろう。ロイも騎士と言ってもまだ子どもだ、わけもわからずここへ連れてこられただけで、戦況がどうなっているかは知らされていないだろう。それはただ漠然とした“いつか”……。
子ども達が交わすその約束はあまりに眩しく、温かかった。
そのいつかを実現するのが、きっと大人の役目というものなのだろう……なんて柄にもない感慨を懐く……まあ、私はもう軍からは外されているのでどうしようもないのだが。
「そうだ、約束の証をやるよ。大事なものだからなくすなよ」
そう思いついたように言って、ロイは懐をごそごそとまさぐった。
何か金品を渡すつもりなのかと不安になって私はそれを見守る。家のものを勝手に渡したら彼がジャックから叱られるかもしれない……。
しかしそこから出てきたものを見て、私も、そしてアザルも目を瞬かせて、思わずそこで立ち止まった。
「ベルタスでたまに拾える珍しいものでさ、学校の子どもがよくお守りに……」
そう言って彼が取り出したのは……白い、それは見事に雪のように真っ白な、葉っぱだったのだ。お守り、なんて言った言葉はさすがに聞き覚えがあって、私の中でも何かが繋がり出してしまう。
「こ……これ! これだよハルク!」
途端にアザルは目を見開いて、ロイの手ごとその葉っぱ……トレントの葉を両手で掴んだ。その勢いにはロイも驚いて、思わずびくりとして片足を退いた。
「え?」
「陛下が大事にしてたお守り! これだよ! ほんとにそっくり……同じみたい! これ、くれるのか!?」
「あ、ああ。俺何枚も持ってるから全然……。えっ、ズミの王様のお守りがトレントの葉? なんで?」
「え? トレンティアの木の葉っぱなのか? なんでだろ……。人からもらったって言ってたから、陛下もトレンティアの人からもらったのかも……」
子ども二人は不思議そうに首を傾げながらも、興奮した様子でその葉のやりとりをした。
「トレンティアの神様の加護が宿ってるんだぜ。だから旅とか引っ越しに出かける友達によく渡すんだ。あなたに、神聖なるトレントの加護がありますようにって……」
〟
(162話「約束の葉」より)
1月のハルク誕生日は祝えなかったのでもののついでにいっしょくたに。
〝
「アザル、お前もいつかベルタスに来いよ。ズミとは全然違うからきっと驚くぞ。俺が案内してやる」
アザルは少しだけ驚いた顔になって視線を上げた。
「それ、トレンティアの町? 陛下が行くなら俺も行くけど……いや、でも今日でクビになるかもしれないから無理かも……」
答える言葉はやっぱり悲愴だった。ロイは少し不機嫌そうにして首を振る。
「別に王様の従者じゃなくても来れるかもしれないじゃないか。すぐは無理でも、大人になったら来れるだろ。いつかな、いつか」
「うん……」
それはきっと戦争が終わった後のことなのだろう。ロイも騎士と言ってもまだ子どもだ、わけもわからずここへ連れてこられただけで、戦況がどうなっているかは知らされていないだろう。それはただ漠然とした“いつか”……。
子ども達が交わすその約束はあまりに眩しく、温かかった。
そのいつかを実現するのが、きっと大人の役目というものなのだろう……なんて柄にもない感慨を懐く……まあ、私はもう軍からは外されているのでどうしようもないのだが。
「そうだ、約束の証をやるよ。大事なものだからなくすなよ」
そう思いついたように言って、ロイは懐をごそごそとまさぐった。
何か金品を渡すつもりなのかと不安になって私はそれを見守る。家のものを勝手に渡したら彼がジャックから叱られるかもしれない……。
しかしそこから出てきたものを見て、私も、そしてアザルも目を瞬かせて、思わずそこで立ち止まった。
「ベルタスでたまに拾える珍しいものでさ、学校の子どもがよくお守りに……」
そう言って彼が取り出したのは……白い、それは見事に雪のように真っ白な、葉っぱだったのだ。お守り、なんて言った言葉はさすがに聞き覚えがあって、私の中でも何かが繋がり出してしまう。
「こ……これ! これだよハルク!」
途端にアザルは目を見開いて、ロイの手ごとその葉っぱ……トレントの葉を両手で掴んだ。その勢いにはロイも驚いて、思わずびくりとして片足を退いた。
「え?」
「陛下が大事にしてたお守り! これだよ! ほんとにそっくり……同じみたい! これ、くれるのか!?」
「あ、ああ。俺何枚も持ってるから全然……。えっ、ズミの王様のお守りがトレントの葉? なんで?」
「え? トレンティアの木の葉っぱなのか? なんでだろ……。人からもらったって言ってたから、陛下もトレンティアの人からもらったのかも……」
子ども二人は不思議そうに首を傾げながらも、興奮した様子でその葉のやりとりをした。
「トレンティアの神様の加護が宿ってるんだぜ。だから旅とか引っ越しに出かける友達によく渡すんだ。あなたに、神聖なるトレントの加護がありますようにって……」
〟
(162話「約束の葉」より)
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