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コラボコメント
本編小説の挿絵っぽいシリーズ。
〝
「おかえり! 挨拶済んだ!? もう行く!? 出発する!?」
彼女の心はとっくに黒い森を越えてはるか遠くへ飛んでいるようだった。
「まだ。あとカディアル家と国王夫婦に顔を出す」
そう答えるとリョーネはがくと項垂れてソファに座り込んでしまった。
私は宥めるように、その隣に腰掛けて頭を撫でてやった。美しい髪は長く伸び、ズミの女服を着込むのももうすっかり馴染んでいる。
「そんな慌てるなよ。ズミは逃げやしないから」
「一秒でも早く帰りたい。やっぱりこんな街で過ごすのは私には無理だよ、ミョーネの気持ちが痛いほど分かる」
「女の格好してても何も言われないだろ」
「女の格好以前の問題だよ! 髪が黒いだけで目立つ目立つ! 頭を隠しててもズミの服着てるだけで目立つ! だからってトレンティア人の服なんか息苦しくて着てられないし、食べ物は分からないし、文字も読めないし、神殿もないし……」
……まあ、不便は多いだろう。離れたくない一心でトレンティアでの同居を承諾させたものの、さすがに永住は無理があったらしい。
ズミに帰れないなら離婚させていただきます、なんて言われてさすがの私も折れることになった。
もっとも、ズミでしばらく充電させたらまたこちらへ連れ去ってやろうとは画策しているが……。
頭を撫でていると気持ちも落ち着くらしく、しばらくするとしゅんとしてただ体を預けてきた。やがて張り合うみたいにして彼女も私の髪を弄ってくる。
「あ、白髪。増えてきたんじゃない? 最近」
「俺も歳だからなあ。お前は俺より歳上のくせにいつまでも黒くて綺麗だが……」
「これは染めてるから。君も黒染めしてみる? 黒髪のパウルも素敵だと思うけど」
「生え際から金髪になるじゃん、余計白髪っぽくて嫌だ」
お互いの髪を弄り合いながら、やがて流れるように口付けをする。
〟
(171話「ひとときの別れに」より引用)
後日談部分です。リョーが女性として生きてパウルと結婚しています。5年後だからパウル41歳リョー45歳……。
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「おかえり! 挨拶済んだ!? もう行く!? 出発する!?」
彼女の心はとっくに黒い森を越えてはるか遠くへ飛んでいるようだった。
「まだ。あとカディアル家と国王夫婦に顔を出す」
そう答えるとリョーネはがくと項垂れてソファに座り込んでしまった。
私は宥めるように、その隣に腰掛けて頭を撫でてやった。美しい髪は長く伸び、ズミの女服を着込むのももうすっかり馴染んでいる。
「そんな慌てるなよ。ズミは逃げやしないから」
「一秒でも早く帰りたい。やっぱりこんな街で過ごすのは私には無理だよ、ミョーネの気持ちが痛いほど分かる」
「女の格好してても何も言われないだろ」
「女の格好以前の問題だよ! 髪が黒いだけで目立つ目立つ! 頭を隠しててもズミの服着てるだけで目立つ! だからってトレンティア人の服なんか息苦しくて着てられないし、食べ物は分からないし、文字も読めないし、神殿もないし……」
……まあ、不便は多いだろう。離れたくない一心でトレンティアでの同居を承諾させたものの、さすがに永住は無理があったらしい。
ズミに帰れないなら離婚させていただきます、なんて言われてさすがの私も折れることになった。
もっとも、ズミでしばらく充電させたらまたこちらへ連れ去ってやろうとは画策しているが……。
頭を撫でていると気持ちも落ち着くらしく、しばらくするとしゅんとしてただ体を預けてきた。やがて張り合うみたいにして彼女も私の髪を弄ってくる。
「あ、白髪。増えてきたんじゃない? 最近」
「俺も歳だからなあ。お前は俺より歳上のくせにいつまでも黒くて綺麗だが……」
「これは染めてるから。君も黒染めしてみる? 黒髪のパウルも素敵だと思うけど」
「生え際から金髪になるじゃん、余計白髪っぽくて嫌だ」
お互いの髪を弄り合いながら、やがて流れるように口付けをする。
〟
(171話「ひとときの別れに」より引用)
後日談部分です。リョーが女性として生きてパウルと結婚しています。5年後だからパウル41歳リョー45歳……。
最終更新日時: 2025/03/02 12:00
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