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コラボコメント

 途端にパウルは目を大きく開いて、しかしすぐには何も言わずに、やがてゆっくりと目を細めて小さく笑った。
「そう、か。ジュリが身籠ったか。……良かったな、本当に」
 しみじみと噛み締めるように、少しだけ掠れた声でそう言った。
「私は……まあ、子どもができるまで何年もかかったからさ。ミョーネがお前を身籠った時どんな気分だったかってそりゃ……、感動して泣いたよ、いや本当に」
 はにかむように笑ってパウルは小さく首を振った。
 改めて、自分の生みの親の話なんて聞くと変な気分になる。……少し前までは聞きたくもないと思っていたのにな。
「生まれた時は、やっぱり男でよかったと思ったか」
「はあ? 一人授かるのにやっとだってのに男か女かなんか考えてなかったよ。なんでもよかったさ、男でも女でも、黒髪でも金髪でも……」
 軽い声色で言うその顔は切なく、遠い昔を懐かしんでいるようだった。……僕自身は金髪に生まれなくて良かった、なんて思ってしまうけど。
「生まれてきた時はそりゃ嬉しかったさ。小さくて……本当に可愛かった。あの気持ちをお前も味わうことになるのかな……いやまあ、まだ分かったばかりだ、先はどうなるか分からない。しっかり気を付けないといけないけどな」
 順調にいったとすれば十ヶ月後……、想像をしてみてもいまいちピンとこない。
 むずむずと眉を動かしている僕を、パウルは薄く微笑んだままの顔で真正面から見つめる。
「トレンティア人の息子に生まれたせいで苦労をしたよな。こんなことを言うのは無責任かもしれないが……、生まれてきてくれてありがとう、ヨハン」
 それは真っ向から受け止めるには少しばかり重たい言葉だった。
 ……今、そういうことを言う時だろうか。そんな疑問がよぎっていって、僕は変な顔のまま首を傾げた。

(本編小説140話より引用)

ヨンの誕生日に寄せての落書き。

コラボキャラ

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アーティスト

敬法 NEO

きょうほうって読みます。煩悩まみれの坊主です。

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