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イラスト説明
【閃刕が砕破様と出会うまでの話】
私が生きてきた中で、子供時代だけは唯一幸せだった。家族に愛され、友人達と笑いあって暮らしていた。
白天使と黒天使の争いが始まるまでは。
「生きろ」。そう遺して私を庇った両親は死んだ。その言葉を守るために、無駄にしないために、突き動かされるように戦った。
傷つき、傷つけ、奪い、奪われ。
どれくらいの間そうしていたのだろう。天界が二つに分断され争いが終息した頃にはもう、身内や知己は誰もいなくなっていた。今更探すまでもない。戦いの最中目の前で死んだか、死んでいる彼らだったものを見つけていたかのどちらかだったから。
知らない天使しかいない天界でひとり。
生き延びた。生き延びることしかできなかった。……生き延びてしまった。
私がもっと強ければ、誰か一人でも守ることができたのだろうか。もっと弱ければ、皆と一緒に逝けたのだろうか。そんな事をぐるぐると考えているうちに、気付けば天界を後にしていた。
逃げたかったのかもしれない。大切な人がいない平和な光景が受け入れ難くて、そこに私だけが残されていることにも耐えられなくて。天界の事など関係ない人間界で、生きる理由を───いや、死に場所を探そうとしていた。
重力に身を任せて降下し、地上が近付いてきた所で翼を開いて降り立とうとした時、突如痛みが走る。
消耗が治らないうちに体を動かしたせいで、深かった傷が開いてしまったようだ。
体勢を立て直せず地面に打ち付けられる。先程のものとは比べ物にならないほどの激痛で呼吸ができなくなる。
その衝撃で瞬時にどうにかなるほど柔な肉体ではないが、かといって無傷では済まず回復できるほどの魔力はない。魔力の薄いここでは時間をかけてもどうしようもないだろう。
流れ出る血液とともに、命が尽きてゆくのを感じる。
戦場では嫌になるほど頑丈だったこの体も、限界が来てしまえばあっけない。あぁ、でも、これでいいんだ。
もう、このまま…………
意識を手放す直前、誰かの声が聞こえた気がした。
私が生きてきた中で、子供時代だけは唯一幸せだった。家族に愛され、友人達と笑いあって暮らしていた。
白天使と黒天使の争いが始まるまでは。
「生きろ」。そう遺して私を庇った両親は死んだ。その言葉を守るために、無駄にしないために、突き動かされるように戦った。
傷つき、傷つけ、奪い、奪われ。
どれくらいの間そうしていたのだろう。天界が二つに分断され争いが終息した頃にはもう、身内や知己は誰もいなくなっていた。今更探すまでもない。戦いの最中目の前で死んだか、死んでいる彼らだったものを見つけていたかのどちらかだったから。
知らない天使しかいない天界でひとり。
生き延びた。生き延びることしかできなかった。……生き延びてしまった。
私がもっと強ければ、誰か一人でも守ることができたのだろうか。もっと弱ければ、皆と一緒に逝けたのだろうか。そんな事をぐるぐると考えているうちに、気付けば天界を後にしていた。
逃げたかったのかもしれない。大切な人がいない平和な光景が受け入れ難くて、そこに私だけが残されていることにも耐えられなくて。天界の事など関係ない人間界で、生きる理由を───いや、死に場所を探そうとしていた。
重力に身を任せて降下し、地上が近付いてきた所で翼を開いて降り立とうとした時、突如痛みが走る。
消耗が治らないうちに体を動かしたせいで、深かった傷が開いてしまったようだ。
体勢を立て直せず地面に打ち付けられる。先程のものとは比べ物にならないほどの激痛で呼吸ができなくなる。
その衝撃で瞬時にどうにかなるほど柔な肉体ではないが、かといって無傷では済まず回復できるほどの魔力はない。魔力の薄いここでは時間をかけてもどうしようもないだろう。
流れ出る血液とともに、命が尽きてゆくのを感じる。
戦場では嫌になるほど頑丈だったこの体も、限界が来てしまえばあっけない。あぁ、でも、これでいいんだ。
もう、このまま…………
意識を手放す直前、誰かの声が聞こえた気がした。
最終更新日時: 2024/07/27 23:19
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