キャラクタープロフィール

──妖狐の一種。
人間に化けて出ることが多く、血液に染まったような赤黒い髪に白く濁った瞳を持っている。
人間が森の迷宮に入ってしまったならば、「こんこん、きゅーん」という鳴き声と共に、小汚い草花や木の実を差し出してくる。
しかし、それは罠である。
手を出してしまったが最後、鋭い牙で食い千切られてしまうだろう。
その後、人間の衣服を身につけた妖狐は「こんこん、きゅーん」と鳴きながら森の奥へと姿を消していくという。
（とある書物より抜粋）

「鋭い牙で、食い千切る……ですか」

黄ばんだボロボロの紙を眺めながら、妖狐はボソリと呟いた。
その言葉には、どこか含みがあるようにも感じられる。

「それに、小汚い草花だなんて。ぼくの恋心は、人間の瞳にはその程度にしか映らないのでしょうか？」

彼の名は紅月。そのガラスのような瞳は、つい見惚れてしまいそうになるほど美しい。
彼は今、自身の住処である洞窟の中に居る。森で文字の書かれた古い紙を拾ったのだ。

「ぼくはただ、本当に人間に好意を抱いているだけなのに」

紅月は自身の頬を撫でる。ずる賢い狐、と言わんばかりに口角は上がり、まるで三日月のように弧を描いていた。

「……こうやって笑うから、怪しまれるのでしょうね」

独り言を呟くと、干し草に横になる。そして、静かに目を閉じた。